9月2日(土) 2023年度東大・京大1⃣翻訳問題と高校受験入試について

東大・京大の入試問題は、高校受験問題に大きく影響を及ぼします。今年度は、東大、京大とも、「インターネット」「時間効率」について出題されました。 2023年度の入試トレンドキーワードです。

2023年 東京大学 英語1⃣ 要約

2010年代には、物の所有よりも「経験」を重視する文化が広まりました。しかしこの現象が新たな課題を生んでいます:時間の不足感。確かに、経験は物質的所有よりも幸福感を高める可能性があると心理学者たちは言いますが、その一方で、どの経験を選ぶべきかという選択のプレッシャーも増しています。

興味深いことに、研究によれば現代人は過去よりも実際には「自由な時間」が増えています。しかし、消費力の向上、スマートフォンの普及、そして選択肢の増加などが組み合わさることで、時間が不足していると感じるようになっています。特にスマートフォンは「汚染された時間」を生み出し、多任務化が進む一方で、実際には私たちを精神的に疲弊させています。

このような時間に関するストレスは、不安やうつ病の引き金にもなり得ます。さらに、これが健康や職場での生産性にも悪影響を与える可能性があります。この問題を受け、最も効率的な時間の使い方を探求する研究が盛んになっています。時代の変化とテクノロジーの進展がもたらす「時間の質」に対する新たな認識と対処法が、今後ますます重要になってくるでしょう。

2023年 京都大学 英語1⃣ 要約

インターネットの普及によって情報の量は爆発的に増加しており、私たちは常にどの情報に時間と注意を割くかを選ばなければなりません。この状況は、公共の議論が断片的または表面的になる傾向を強化しています。話題が多様化する一方で、各話題に対する関心は一過性になりがちであり、興味のある情報にのみ集中することで視野が狭くなる可能性もあります。

しかし、情報の洪水の中で、重要かつ有益な情報を選び出し、その深層を探る能力が今や必要不可欠です。すべての情報に時間を割くわけにはいかないので、何に時間とエネルギーを投資するかを明確にする必要があります。本当の理解や深い知識は、時間と努力をかけた結果としてのみ得られる貴重な資産です。

日常生活においても、情報に対する洞察力と理解は、より良い判断と意思決定に繋がります。つまり、情報の質に注力し、その背後にある文脈や意味を理解することが、現代社会での賢明な選択と行動には不可欠です。

キーワード

東大

スマートフォンの普及

所有よりも「経験」を重視する文化

どの経験を選ぶべきかという選択のプレッシャー

スマートフォンは私たちを精神的に疲弊

ストレスは、不安やうつ病の引き金

効率的な時間の使い方を探求する

京大

インターネットの普及

情報の量の増加

議論が断片的または表面的になる傾向

視野が狭くなる

有益な情報を選び出し、その深層を探る能力

深い知識は、時間と努力をかけた結果

共通のキーワード

①インターネット・スマートフォンの普及

②情報量の増加と疲弊

③効率的な時間の使い方・有益な情報を選び出す力

当塾から

2023年度の東京大学(東大)と京都大学の出題内容が「インターネット」、「時間効率」、および「有益な情報を選び出す力」が出題されました。2024年度の入試のトレンドとして、携帯電話、時間効率、有益な情報の選別等は、自校入試問題、共通入試問題のキーワードになると思われます。

※関心経済について

関心経済(アテンションエコノミー)とは、人々の注意や関心がお金のように価値を持つという考えです。この考えが生まれた背景には、インターネットやスマートフォンによって情報があふれている現代社会があります。情報が多すぎるため、人々の注意を引くことが重要になっています。

1969年に心理学者・経済学者のハーバート・サイモン氏が提案したこの概念は、私たちの注意力(アテンション)が有限であり、それが今や貴重な資源となっているという点に注目しています。サイモン氏は経済が消費中心から情報中心へと移行する過程で、人々の注意が経済的価値を持つようになると予測しました。

この概念がさらに進展したのが1996年で、アメリカのジャーナリスト、ヘンリー・ゴールドバーガー氏によって「アテンションエコノミー(Attention Economy)」と名付けられました。ゴールドバーガー氏は、情報が溢れかえる現代社会において、人々の注意を集めること自体がビジネスや価値創造の重要な要素となると指摘しました。

キーワードの説明

①インターネット・スマートフォンの普及

インターネットとスマートフォンは現代社会において、情報とコミュニケーションの手段として非常に重要な役割を果たしています。特にスマートフォンの普及によって、どこでも簡単にインターネットにアクセスできるようになり、情報の収集や人々とのコミュニケーションが飛躍的に容易になりました。しかし、その一方で、情報過多や偽情報、プライバシー侵害といった問題も増加しています。

②情報量の増加と疲弊

インターネットの普及に伴い、情報量は爆発的に増加しています。これによって、一人ひとりがアクセスできる情報の質や量が多くなった反面、そのすべてを処理することは難しく、疲弊(情報疲れ)が起こることも少なくありません。特にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などで流れる情報は速く、その追従には時間と労力がかかります。

③効率的な時間の使い方・有益な情報を選び出す力

上記の問題を解決するためには、効率的な時間の使い方と、有益な情報を選び出す力が求められます。具体的には、目的に応じて情報源を選定したり、情報の信憑性をチェックするスキルが必要です。また、時間管理をしっかりと行い、必要な情報だけを効率よく取得する方法を身につけることで、情報疲れを防ぐことができます。このようなスキルは、現代社会においては必須とも言えるでしょう。

東大 引用文

No wonder many of us suffer from what psychologists call “time famine.” There have been calls to resist the attention economy, but the factors that make us feel time-poor aren’t going away anytime soon. Tech companies, for instance, may have built apps to tell you how much time you spend on your device, but their business models rely on your continued use. People who feel short of time are more likely to be anxious or depressed. They are less likely to exercise or eat healthy foods. And they are less productive at work. It makes sense then that there has been growing interest from psychologists in the best ways to spend our time.

心理学者たちが言うところの「時間欠乏」に私たちの多くが悩まされるのも当然である。関心経済に抵抗しようという呼びかけは以前からあるが,私たちに時間が足りないと感じさせる要因は,すぐになくなりそうにはない。たとえば,テクノロジー会社は,端末にどれだけ時間を費やしているか教えてくれるアプリを作ったかもしれないが,彼らのビジネスモデルは消費者が端末を使い続けることに依存している。時間が足りないと感じている人たちのほうが,不安やうつに陥りやすい。彼らのほうが運動し,健康的な食べ物を食べている可能性が低い。そして,彼らのほうが仕事では生産性が低い。それなら,最もよい時間の使い方に対する心理学者の関心が高まっていることもうなずける。

京大 引用文

So, this is the takeaway for us all in daily life. Do you need a PhD in climate science to know that recycling your rubbish is better for the planet than throwing it all in the ocean? Of course not. But taking some time to dig a little deeper into a subject and weighing up the evidence, the pros and cons about an issue, before making up your mind can help you make better decisions in the long run. Most things in life are difficult to begin with. But, if you’re prepared to try, you can cope with far more than you imagine.

つまり,これが日常生活における私たち全員への教訓である。ゴミをすべて海に捨てるより,それをリサイクルした方が地球にとってよいということを知るのに気候科学の博士号が必要であろうか。もちろん,そんなことはない。しかし時間をかけて一つのテーマをもう少し深く掘り下げ,一つの問題についての根拠となる賛否を比較検討した上で,自分の考えをまとめることは,長い目で見れば,よりよい決断をすることにつながるだろう。人生のほとんどのことは,最初は難しいものである。しかし,挑戦する覚悟があれば,人は想像をはるかに超えることに立ち向かうことができるのだ。

東大 重要単語

単語

Psychologists

“Time famine”

Attention economy

Factors

Tech companies

Business models

Device

Anxious

Depressed

Exercise

Healthy foods

Productive

Work

意味

心理学者

時間の飢饉

注意経済

要因

テクノロジー企業

ビジネスモデル

デバイス

不安な

抑うつな

運動

健康的な食品

生産的な

仕事

発音記号

saɪˈkɒlədʒɪsts

taɪm ˈfæmɪn

əˈtɛnʃən ɪˈkɒnəmi

ˈfæktərz

tɛk ˈkʌmpəniz

ˈbɪznɪs ˈmɒdəlz

dɪˈvaɪs

ˈæŋkʃəs

dɪˈprest

ˈɛksəˌsaɪz

ˈhɛlθi fuːdz

prəˈdʌktɪv

wɜːrk

京大 重要単語

単語

Takeaway

PhD

Climate science

Recycling

Rubbish

Planet

Subject

Evidence

Pros and cons

Issue

Decisions

Long run

Prepared

Cope

意味

重要な点、要点

博士号

気候科学

リサイクル

ゴミ

惑星

主題、話題

証拠

賛否両論

問題

決定

長期的に

準備ができている

対処する

発音記号

ˈteɪkəˌweɪ

ˌpiː eɪtʃ ˈdiː

ˈklaɪ.mɪt ˈsaɪ.əns

ˌriːˈsaɪ.kəl

ˈrʌb.ɪʃ

ˈplæn.ɪt

ˈsʌb.dʒekt

ˈev.ɪ.dəns

proʊz ænd kɒnz

ˈɪʃ.uː

dɪˈsɪʒ.ən

lɒŋ rʌn

prɪˈpeərd

koʊp