1月5日(金) 好奇心の大切さについて

日々感じることは、「好奇心の大切さ」です。「好奇心の大切さ」を感じるために、小林秀雄と湯川秀樹との対談集の一節を、掲載させていただきます。

小林秀雄:エントロピーというのは何語ですか。

湯川秀樹:ギリシャ系の言葉じゃないですか。あの言葉に限って訳語というものがないのです。19世紀の人たちもずいぶん苦しみ抜いた、エントロピーの問題、それからエーテルの問題、この二つで苦しんだ。エーテルの方は相対性原理で解決がついた。エントロピーの問題はなかなか簡単にいかない。ちょうどエントロピーの問題はラッキョウの皮をむいてゆくようなもので、いくらむいても最後の所へ行かない。

※エントロピー
エントロピーは、物事の「ごちゃごちゃしている度合い」を表す言葉です。例えば、部屋が散らかっているとき、そこには高いエントロピーがあると言えます。反対に、部屋がきれいに片付いているときは、エントロピーが低いと言えます。

※エーテル
「エーテル」とは、昔の科学者が考えた宇宙を満たす架空の物質で、光や重力が伝わる方法を説明するために使われていました。しかし、アインシュタインの相対性理論の登場により、光や重力は特別な媒体を必要とせず、空間を通って伝わることがわかり、エーテルの概念は古いものとなりました。科学の進歩により、古い理論は新しい発見で更新されることがあります。

小林秀雄と湯川秀樹の対話から浮かび上がるのは、科学が常に変化し続ける不思議な世界であるということです。特に、「エントロピー」と「エーテル」という二つの概念は、科学の進歩がどのようにして古い考えを新しい理解へと導くかを示す鮮明な例です。

エントロピーという概念は、日常生活の中でさえも、物事の無秩序さを理解するのに役立ちます。部屋が散らかっている状態が高いエントロピーを示すように、エントロピーは私たちの周囲の世界の本質的な特性を表しています。しかし、科学的な文脈では、この概念ははるかに複雑で、完全には解明されていない多くの問題を含んでいます。

一方で、エーテルの概念は科学の歴史における興味深い一幕を提供します。かつては宇宙の隅々を満たしていると考えられていたエーテルですが、アインシュタインの相対性理論によってその必要性が否定されました。これは、科学がいかにして自らの過ちを正し、新たな理解へと進化していくかを示す素晴らしい例です。

この対話を読むことで、私たちは科学が決して静止したものではなく、常に疑問を持ち、新しい発見に向かって進む動的なプロセスであることを理解できます。エントロピーとエーテルの物語は、知識の探求が終わりのない旅であることを思い出させてくれます。ラッキョウの皮をむくように、いくら多くの層を剥がしても、常に新しい層が待っているのです。この永遠の探究心こそが、科学を魅力的で、生き生きとした分野にしています。

湯川秀樹の作品は、入試問題の定番ですが、その問題文の奥底には、「少年のような好奇心」があるのではないかなと思っております。