問いを戦略に変える

子どもの学力が伸びるとき、そこには必ずと言っていいほど「気づき」があります。しかしその気づきは、誰かが正解を教えてくれたときに起こるのではなく、自分自身が「どこで、どう迷ったか」を見つめ直したときにこそ芽生えます。入試に向けた学習においても、正解・不正解の判定そのものよりも、「なぜそう答えたのか」「どこで判断がずれたのか」を振り返る力こそが、得点を押し上げる確かな起点となります。私たちは、その振り返りの力を「言葉にすること」から育てていきます。
たとえば問題演習のあと、子どもが「間違えたけど、なんでかわからない」と言う場面があります。これは、知識不足ではなく、自分の思考の動きをつかみきれていない状態です。この状態のまま次の演習に進んでも、同じような失点が繰り返されてしまうことがあります。そこで私たちは、間違えた理由をただ指摘するのではなく、「なぜそう考えたのか」「他にどんな選び方があったのか」といった問いかけを通じて、思考のプロセスを言語化する時間を重ねていきます。自分の言葉で「ここで迷った」「この選択肢と迷って根拠が弱かった」と語れるようになると、そこには既に、次の正解への足がかりが生まれているのです。
この「言語化を通じた自覚」は、単なる振り返りではなく、学びの質を転換させる契機でもあります。点数の波を単なる結果として受け止めるのではなく、「なぜ上がったのか」「なぜ下がったのか」という問いを、自分の中に持てるようになる。こうした姿勢が、学習を他人に言われたからやるものから、自分の意思で設計するものへと変えていきます。これはまさに、「指導される学び」から「自分から進んで学ぶ」へのシフトです。
また、この力が育ってくると、「また点が下がった」「ちゃんとやっているのに結果が出ない」といった焦りが、「なるほど、今はここを言葉にできていない段階なんだ」という理解に変わります。
私たちは、正解を一問でも多く教えることよりも、「その正解に至るまでの迷いと気づき」に価値を置いています。なぜなら、その迷いを自分の言葉で乗り越えた経験こそが、入試という一日だけの舞台ではなく、その先の学びを支える本質的な力になるからです。点数の波は、失敗ではなく、対話の入口。そうとらえる姿勢を、私たちは子どもたちと一緒に、ゆっくり育てていきます。

 

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