令和2年度から、指導要領が改定されています。大きな流れは、図やグラフを活用し、それらを読み取り活用することです。下記に、改定指導要領のあらましを記させていただきます。
これまでの指導要領は、「教員が何を教えるのか」という観点を中心に組み立てられていました。教えるべき内容に関するものが中心で、知識や技能に洽って整理されていました。指導の目的が知識・技能にとどまりがちであり、一つ一つの学びの目的、育てる力がどのようなものかは明確ではありませんでした。新指導要領では、子どもたちが学びを通してどのような力をつけるのか、そして、その力をどのように活用するのかまで記載されています。
○子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一屑確実に育成。 「社会に開かれた教育課程」を重視。 ○現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持。 知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成。 ○道徳教育の充実、体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成。
〔何ができるようになるか〕 「生きる力」を育むため、「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しながら、全ての教科等を、 ①知識及び技能 ②思考力、判断力、表現力等 ③学びに向かう力、人間性等 の三つの柱で再整理。
学習の過程を通じて、3つを相互に関連づけながらの習得を目指します。 ①知識及び技能…何を理解しているか、何か出来るか →個別の知識のみではなく、相互に関連して社会の中で生きて働く知識。 ②思考力、判断力、表現力等…理解していること、出来ることをどう使うか。 →未知の状況にも対応出来る。 ③学びに向かう力、人間性等…どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか →学びを人生や社会に生かす。 〔何を学ぶか〕 新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標の見直しも行なわれます。 小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目「公共」などの新設などです。各教科等で育む資質・能力を明確化し、目標や内容を構造的に示しています。
〔どのように学ぶか〕 主体的・対話的で深い学び「アクティブラーニング」の視点からの学習過程の改善です。 「主体的な学び」とは、子どもが学びに興味や関心をもって向かい、次の学びに繋げることです。子どもの興味や関心が湧くように題材や問いを吟味したり、子どもに学習の見通しを持たせたりすることなどが求められます。 「対話的な学び」とは、他者の考えと交流しながら自身の考えを広げて、それを深める学びです。
「深い学び」とは、各教科等の特性に応じた「見方・考え方」を働かせる学びです。知識を相互に関連づけてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、課題を見つけて解決策を考えたり、思いや考え方をもとに創造したりする過程で、各教科等の「見方・考え方」を働かせるような学びです。 「主体的・対話的で深い学び」とは、授業改善のためのものであり、何か特定の指導方法のことではありません。 ※「見方・考え方」とは 新旧の知識・技能を結び付けて活用したり、思考力・判断力・表現力を発揮したり、課題を見つけて解決策を 見出したりします。その過程で、視点や考え方が鍛えられていきます。これが「見方・考え方」です。「見方・ 考え方」には教科の特性があります。 国語「言葉による見方・考え方」…自分の思いや考え方を深めるため、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けること。 数学「数学的な見方・考え方」・・・事象を、数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、総合的、 発展的に考えること。
主な変更点 数学 [1年] ・用語「素数」 ←小学5年から ・素因数分解 ←中学3年から ※最大公約数や最小公倍数など、「整数の積」を使った内容。 ・用語「累積度数」 ←高校数Iから ・多数の観察や多数回の試行によって得られる確率 ←中学2年から [2年] ・用語「反例」 ・四分位範囲や箱ひげ図 ←高校数Iから [3年] ・誤差や近似値、 a×10ⁿ の形の表現 ←中学1年から ・自然数を素因数に分解すること →中学1年へ
英語 ・現行版は1,200語⇒改訂版では小学で学習した600~700語に新たに1,600~1,800語追加 ・授業は英語で行うことを基本
高校から移動したもの 感嘆文のうち基本的なもの 主語+動詞+間接目的語+thatで始まる節/ whatなどで始まる節 主語+動詞+目的語+原形不定詞 主語+be動詞+形容詞+thatで始まる節 現在完了進行形 仮定法のうち基本的なもの
国語 ① 語彙指導の充実、系統性の強化 言葉どうしの関係性の理解。学校間のつながりが、より螺旋的・系統的・反復的になった。 低学年の学力差は語彙力の違いが大きい。 ・語彙を増やす →増やす語彙のジャンルを明記 ・言葉どうしの関係性の理解 →言葉のまとまり(語彙)を意識 中1:行為・心情・事象 中2:抽象的な概念 中3:理解や表現に関するもの さらに意味のまとまり、性格や役割によるまとまり、語句の構成や変化の理解
② 情報の扱い方に関する指導の改善・充実 〔知識及び技能〕に「情報の扱いに関する事項」が新設。 →「共通、相違」「原因と結果」(小学校)、「原因と結果」「意見と根拠」「具体と抽象」(小・中学校)などの「情報と情報との関係」、「比較や分類」「関係付け」(中学校)など「情報の整理」の二系統に整理し、正しい情報の読み取り方と正しい利用法について学習する。
③ 読書指導の重視 〔知識及び技能〕に、読書に関する指導事項を位置づけ 〔思考・判断・表現〕の「読むこと」に学校図書館の利用などの言語活動例を提示。
④ 「わが国の言語文化」の重視 現行指導要領では「伝統的な言語文化と国語の特質」として取り上げられていたが、「知識及び技能」の指導事項になった。
理科 ・自然の事物・現象をどのような視点で捉えるか。 「エネルギー」…量的・関係的 「粒子」…質的・実体的 「生命」…共通性・多様性 「地球」…時間的・空間的 ・どのような考え方で思考していくか。 「比較する」「関係付ける」「条件を制御する」「多面的に考える」 →問題解決する過程でこれらの視点や考え方を子どもが働かせて、資質・能力を育成していく。 ・「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」を柱とした理科の資質・能力を育成する観点から、科学的に探究する学習、日常生活や社会との関連がより重視された。 ・改善・充実された内容は、 第1分野では「放射線」を中3に加えて中2でも扱うこと、第2分野では「自然災害」を中3に加えて中1、2でも扱うこと。中1で生物の分類のしかたを扱うことがある。
社会 〔地理〕 ・大項目が2つ→3つへ。 ①「世界と日本の地域構成」 ②「世界の様々な地域」 ③「日本の様々な地域」 ・大項目①「地球のすがた」+「日本のすがた」に。「時差」も大項目①(中1地理前半)で扱う。 ・大項目③のはじめに「(地形図等を使った)地域調査の手法」。かつて大項目②にあった「身近な地域の調査」が移動。
〔歴史〕 ・大項目が6つ→3つへ。 ①「歴史との対話」 ②「近世までの日本とアジア」 ③「近現代の日本と世界」 ・大項目②中項目「古代までの日本」小項目「世界の古代文明や宗教のおこり」でギリシヤ・ローマの扱いが増加。 ・大項目②中項目「中世の日本」の扱いが増加。ユーラシアの変化や琉球を扱う。「モンゴル帝国の拡大」など。戦国の動乱は中世に含まれることに。
〔公民〕 ・単元構成に大きな変化はないが、テーマとなる用語等が、現在の社会情勢(グローバル化、AI、防災、地域連合変化[USMCA]など)を考慮したものに変更されていく。 ・新指導要領でも、大項目の順は現行の指導要領と同じで「現代社会」→「経済」→「政治」。 |