8月2日(水)「すぐ理解できるような問題」をなぜ生徒は重視しないのか

生徒がすぐに理解できるような問題に対して重視しない理由について、いくつか書かせていただきます。

①過信

人間は自身の能力や知識を過大評価する傾向があります。これは過信バイアスと呼ばれ、結果として難易度が低いと感じる問題に対して十分な注意を払わず、適切な学習や復習を怠る可能性があります。

②労力の見込み効果

労力の見込み効果とは、人間が自分の目標を達成するために必要とされる労力を予測し、その結果として労力の大きさに基づいて行動を決定するという現象を指します。

この現象は、人間の心理的な傾向、特に「最小労力原理」に由来しています。最小労力原理とは、同じ結果を得るためには最小限の労力を使うべきだという原理です。これは、リソースを節約し、生存と繁栄の可能性を最大化するための進化的な戦略とも解釈できます。

したがって、難易度が低く、すぐに理解できるような問題に対しては、大きな労力を必要としないと思われることが多いです。これにより、その問題に対する深い理解や練習を必要とする学習行動が起きにくい、ということが起こりえます。つまり、これらの問題に対して必要な練習や学習を怠ることで、結果的にその理解が表面的なものに留まったり、あるいは忘却が生じやすくなったりする可能性があります。

これを防ぐためには、学習者自身が学習の目的や目標を明確にし、それに向かって継続的に労力を投じることが重要です。また、学習プロセス自体を楽しむ心構えを持つことや、自身の学習成果を定期的に振り返ることも有効な対策となります。

③練習効果の過小評価

単純で容易な問題に対しては、一度理解すれば十分と感じ、繰り返し練習することの価値を過小評価してしまうことがあります。しかし、どんなに単純な問題でも、繰り返し練習することでその知識やスキルは深まり、忘却の可能性も低くなります。

④達成感の欠如

地味で容易な問題は、解決したときに大きな達成感を得ることが難しいかもしれません。これは、人間が挑戦的な問題に取り組むときに感じる達成感や報酬感が、学習や努力を継続するための重要な動機付けとなるためです。

これらの理由から、地味ですぐに理解できるような問題に対しては、適切な注意を払い、定期的に復習を行い、その知識を深めることが重要となります。また、このような問題に対する取り組み自体を価値あるものと捉え、継続的な学習の一部として位置づけることも重要です。